1話 試練の始まり

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 リングはシイの言葉を受け入れたふりをして、その場から去ろうとした。シイはうるさいリングがいなくなると思い、また寝ようとした。その時だった。 リング「ファイト! リング!」  リングは振り返り、右手をシイに向けてかざした。彼女の右手から数個の金色の光り輝く輪がシイに向けて放出された。リングの魔法は光輝く輪を自由自在に出すものだ。 シイ「お前、いきなり何しー……」  シイが咄嗟にリングの輪をよけようと起き上がったとき、シイが横になっている枝の付け根がリングの輪によって攻撃され、折れた。  シイは枝ごと地へ落ちた。受け身を取ったので、彼は小さいかすり傷程度の軽傷で済んだ。  不意打ちのリングの攻撃にも、シイは咄嗟の判断で対応できている。 シイ「正気か……。お前。スタートする前から戦闘するなど聞いたことが、ない。戦闘は魔力と体力を消耗する。やめておいた方が、いい。それに、お前は俺に勝てない」  シイは右ポケットに手を入れ、リングに光り輝く何かを見せた。金色の紋章、推薦候補生の証だ。 リング「わかってるよ。シイ君。でも、同盟を組んでくれないなら、力ずくでも、行くしかないんだよ! ファイト! リング・リング!」  リングは両手をシイへ向け、多数の光り輝く輪を放出した。シイは言うことを聞かないリングに舌打ちをして、楓の木の陰に隠れる。 リング「リング・リング!」  リングはさらに攻撃を続ける。リングは木ごとシイを攻撃した。リングの光り輝く特殊な輪の衝撃で楓の木が切られ、シイめがけて倒れる。 シイ「腕部強化(アーム・エンハンスメント)」  シイは腕を強化し、左手で木を受け止め、リングめがけて押し返した。あまりの速さにリングは反撃できず、木が右半身に当たり、ダメージを受け、倒れてしまう。 リング「きゃああっ!」 シイ「こんな木も避けられないようじゃ、まだまだだな」 リング「痛っ。もう怪我しちゃった。本当にまだまだだ。わたし。でも、シイ君だってわたしみたいな弱いの相手に魔法を使ったね」  シイはリングより格段に魔力・体力が優れている。彼は魔法なしでも十分強い。シイはその高い身体能力を活かす肉体強化の魔法の使い手である。 シイ「さすがにこんな太い木相手だと負傷する。ファイト前の負傷は避けなければ、ならない。お前も早くその怪我を直すことだな。もしくは棄権、しろ」 リング「やっぱり、同盟は組んでもらえないか」 シイ「当然だ」 リング「じゃあ仕方ない! ファイト!リング!」  リングは右手を天にかざした。太陽光に照らされ、金色の輪は目が眩むほど輝く。
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