2話 チームリング始動

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2話 チームリング始動

 ”登竜門”は白い大きな石柱二本の間に頑丈な鋼鉄の柵が付いている大きな門である。錆付いて老朽化こそしてきているものの、堅固な門は歴代”ファイト”の始まりの地として大勢の参加者達を見守ってきた。  普段と違い、門の松明には火が轟々と燃え盛っている。普段と違う門の様子にリングは少し怖気づいていた。  ”ファイト”の試験管の男が大きな門を開けた。76年も開かずにいた門は軋んでおり、嫌に大きな音を上げて開く。  ギィィィィ…ガタン  五人が門をくぐると、試験管は門を閉じた。早速ファイトに参加するという実感が湧いてきた。  ”登竜門”から約千km先のゴールの”旧キング・クイーン城”までの道のりは、酷いものである。大小様々な木や雑草が無造作に生い茂っており、道はない。この森を見れば、誰もが鬱蒼とした森と思うに違いない。初夏だというのに、この深い森は光が届きにくく、不気味な雰囲気を醸し出している。  この”平和の森”は”ファイト”の試験会場になっており、普段は騎士団が入り口を見張っているため、誰も入ることができない立ち入り禁止エリアだ。また、国の重要極秘エリアとされている。  しかし、特別な許可が下りれば、森の中の二つの演習場を使用することができた。リングたち五人は”ファイト”に向けた戦闘の演習で二つの演習場までは入ったことがある。  実質、リングたちが知らないエリアは二つ目の演習場より向こうだ。  この広大な”平和の森”の中の道なき道を少年少女達は進まなくてはならないが、目印となる地点(ポイント)はいくつかあった。  ”平和の花畑”  ”平和の湖”  ”平和の山”  ”制覇山(せいはさん)”  そして最終目標地点の”旧キング・クイーン城”がある。  それぞれがどのような位置関係か、簡単に記されている地図は配布される。だが、それ以外の道の勾配や縮図が何倍かなどは全く記されていない。粗末な地図を頼りに劣悪な森をただひたすらに王と女王を目指して、進むのは容易なことではない。ましてや、普通の9~15歳の少年少女にできることではない。  雲の国の国民は、いつ”ファイト”が開催されてもいいように、勉強の他に義務教育として魔法を使用した戦闘技術・サバイバル戦法を学んでいる。
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