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不思議な感覚を体験した後に、身体を起こした。
それからはいつも通りのルーティンを始める。お尻までの長さがある、太陽の光に似た橙色のさらさらした髪を二つに結ぶ。洗面し、着替え、いつも通り亡き父の遺影に挨拶をする。
「行ってきます。お父さん」
「早く支度しなさい!! 遅れたら大変よ!」
母の声が一階から聞こえてきた。
「はーい」
二階の自室から急かされるように階段を下り、台所に向う。そこでいつも通り母と二人で食事を朝食を摂る。時間になったので、家を出ようと玄関戸に触れた時、母が心配そうに言った。
母「危ない目に遭いそうになったら、すぐに棄権するのよ。あなたが大変な目に遭ったら、お父さんが天国で悲しむわ。無事に帰ってきてね……リング」
秋原リングの家は母と愛犬のココル、二人と一匹の暮らし。父は六年前に火事で他界していた。
リング「わかってるって! 同じこと何回も聞いているんだから。大丈夫だよ。わたし、絶対無事に帰ってくるから。もう、お母さんってば心配しすぎ!じゃあ、行ってきます!」
リングはいつも通りに満面の笑みで左手を大きく振り、家を出た。
ただ、いつも通りでないのは、リングが当分家に帰らないということだった。
(大丈夫、大丈夫、ファイトだよ、わたし。仲間もいるから頑張ろう)
リングは自分を励ましながら、学校へ向かう。
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