1話 試練の始まり

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 今日は第百代目王と女王を決める過酷な試練"ファイト"が開催される日だ。  国の中心部の中では最も大きい、リングの通う中央部セントラル校で開催前の説明会が行われる。  秋原(あきはら)リングは12歳の少女で、長い橙色のおさげ髪を左右2づつ金色の輪で結っている。首や服の裾、両手首にも金色の輪をつけ、桃色の上下が分かれた服を着ている。  桃色と金色の輪は、彼女の橙色の髪をより明るく際立たせ、彼女を見ると元気が出てくる。そんな底なしの明るい印象を人に与える。加えて、顔は同学年の少女の中では1番に整っていると言ってもいいほどだ。  そんな彼女にあこがれを抱く異性は少なくない。しかしながら、当の本人は少し抜けた性格をしており、そのことには全く気が付いていないようだった。  同性の生徒からは持ち前の美貌のことで反感を買いそうだが、彼女の明るく、前向きな性格は同性からも人気があった。  ややこしいことに、リングの口癖は「ファイト」であった。しかしそれは自分を勇気づけるために言っている。    そんな明るい性格のリングだが、一時期は酷い人間不信に陥っていた。今は克服したのだが、彼女にも辛い時期があったことがある。  リングが通学路の曲がり角を曲がったとき、人影が見えた。 ?「おはよう。あたし、あんたには負けないから。せいぜい頑張ることね」  強い口調で吐き捨てるように言うと、その者は去っていった。彼女の名前は、冬野(ふゆの)アメカ。  リングと同じ年で、背はリングより少し高く、長い承和(そが)色の髪を左耳の上で1つにまとめた髪型をしている。目にかかる長い前髪は右耳にかけ、水色の勾玉を留めている。瞳は釣り目で濃い緑色である。  アメカは白地に黄緑色の半袖シャツを着ており、その上に深碧(しんぺき)のサロペットスカートを履いている。腰には木のベルトを着け、薄茶色の袋をぶら下げた格好をしている。  二人はもともと幼馴染だったが、今はとあるでき事がきっかけで絶交中である。 (何よ、アメカのやつ。わたしだって、あんたに負けないわよ)  アメカと会ったことでリングはモヤモヤした思いのまま、学校に着いた。  学校には普段見る生徒と、そうでない生徒とたくさんの人がいた。リングは説明会が執り行われる教室に入った。全員緊張の面持ちだった。  たくさんの人がいるのに、誰一人言葉を発さず、教室内は静まりかえっている。しばらくしてファイトの教官が入ってきた。その者は、リングにとって見覚えのある顔だ。
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