50人が本棚に入れています
本棚に追加
「リング」
「あっ……ウラ!」
後ろからリングに声をかけてきたのはチャン・ウラだ。彼女もまた同じクラスである。ウラは紫色の髪を両耳の上でお団子にまとめ、茜色のカンフー服を身につけている。彼女はリングの親しい友人の一人である。
ウラの横から、背の低い少女が続けてリングに声をかけてきた。
「二人とも、頑張ろうね」
リング「美里!!」
リングは美里に抱きつく。佐野美里もまた、リングと同じクラスであり、親しい友人だ。
美里は水色の髪と顔周りだけ青い髪色が特徴的なおかっぱ頭の少女で、若芽色と薄い浅緑の和服を着ている。
ウラ「美里がいるなら心強いよ。だって、国から推薦されたもんね」
美里「そんなことないよ、ウラちゃん」
美里は頬を赤らめる。
”ファイト”はリングやアメカ、ウラ、サジノスケのように自主的に参加権を獲得し、参加する者が大半を占めている。
それとは別に、学力・魔力・品格等が優秀で、国から推薦されて参加する”推薦候補生”がごく僅かだが存在する。
それは全体の中でどのくらいいるか等は明らかにされていない。
美里は数少ない推薦候補生の一人だ。最も、彼女は推薦されなくても、ファイトに参加するつもりではあったが。
リング・ウラ・美里がコソコソと会話しているところに、サジノスケが話しかけてきた。
サジノスケ「何の話してんだ?」
ウラ「アンタには関係ないでしょ」
ウラは彼を冷たくあしらう。
サジノスケ「おいおい、ウラ。俺たちおさじなみだろ。冷てぇな」
サジノスケは除け者にされて不服そうに話す。
ウラ「アンタねえ。お・さ・な・な・じ・み!だから。アンタみたいなアホと幼馴染みって最悪よ」
ウラは嫌そうな顔をして言う。
美里「あのね、私達三人は同盟を組んでファイトに参加するの。」
ウラと変わり、優しい美里は寛容的な態度だ。
リング「美里! 何で話すのよ!」
美里「ごめん……」
”ファイト”は参加者のほとんどが単独で参加する。というのも、リング達のように同盟を組む者達は、毎回いることはいるのだが、必ず食糧問題や戦闘中の裏切り、意見のに不一致などで仲間割れを起こしていた。その為、同盟を組むことは”ファイト”参加者にとって不利になるのだ。
このことは歴代のファイト参加者から語り継がれている。三人はこの事実を当然、知っていた。最初はリングがウラと美里の二人に打診し、二人は拒否したのだが、何日も何日もリングは他の二人を説得し、とうとうウラと美里は折れたのだった。
ウラ「もう、美里ってばサジノスケには優しいんだから。まぁ、仕方ないか。だってサジノスケのことー。むぐっ」
美里「みんな、ちょっとあっちに行こう!」
真っ赤な顔をして、美里は半ば強引にウラの口を塞ぎ、その場から去ろうとした。リングも後を追う。美里はサジノスケに好意を寄せている。
そして、美里はサジノスケがリングに思いを寄せているのも知っている。ウラがうっかり口にしてしまいそうになったのを美里は阻止した。
サジノスケ「よし、俺も仲間になるわ」
リング・ウラ「「は?!」」
サジノスケ「…だって、男の俺がいた方が、もっと頼もしくなるし!! 毎日(リングちゃんと)一緒とか…。わー…。絶対仲間になるべきだろ?」
美里「私はいいよ」
ウラ「ムリムリムリムリムリ。アンタあたしより弱いじゃないの!!」
美里「ウラちゃん。三人より四人の方がもっと安心できるよ。サジノスケ君、入れてあげようよ」
サジノスケ「美里!! いいヤツだなっ! 本当にありがとう。あ、これからよろしくな」
ウラ「何勝手に仲間入りしてんのよーっ!」
ウラのツッコミも空しく、リングは意外な反応を見せた。
リング「入れよう。サジノスケ入れたら、男子もいるから……シイ君入ってくれるかも! ウラ、サジノスケも仲間決定ね」
(全く、この人たちは何のためにファイトに参加しているんだろう……)
ウラは遠い目をして呆れていたが、なんやかんやで友達思いのウラはリングと美里を甘やかし、サジノスケとシイが仲間になることを承諾した。
最初のコメントを投稿しよう!