第一章 小学生

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2  福沢時計店の朝は早い。  否、早すぎる。  世の店は大抵九時か十時、飲食店であれば早くて七時から開店するところが殆どだ。早朝からただの時計店に来る客などいるとも思えないのだから、朝の五時に起きて六時にオープンする必要など全くないと、福沢幸哉は常日頃から感じている。  ――いくらカフェもやってたってな……! 看板が時計店な以上知ってる奴しか来ねーだろ! 休みの日くらい昼まで寝かせろ!  ただでさえ昨夜は徹夜だったのだ。父のおかげで再度ベッドに入った時間はより遅くなり、すっかり寝不足状態。目の下にはクマが出来ている。しかし平日の朝は家を出る八時まで手伝うのが日課であり、創立記念日の今日も平日である限り例外じゃない。例外にしたかったが朝早く掃除機をかけにきた斗夢に起こされ、こうしてエプロンを纏ってカウンターに立つことになった。  コクのある香りに包まれながらコーヒーの出来る音を聞くのは好きな方だが、睡眠を妨害しに来た父親が店の準備を終えて直ぐに二度寝へ向かったのを思い出すと苛立ちも込み上がるというものだ。  カランコロンとドアベルが音を鳴らし、来客の訪問を告げるまで顔は不機嫌を露わにしていた。即座に取り繕う営業スマイルはお手の物である。 「いらっしゃいませー!」
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