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 当たりが暗くなり、大輪の花火が天空に咲いても、美優の心には花火が咲かなかった。由紀も瑠理香もカレシさんたちも気を使ってくれて、いろいろ話しかけてくれるけど、やはり寂しかった。四人は華やかに着飾り、自分だけが金魚の糞みたいにくっついて回っている。  何十連発の色とりどりの光が夜空を染め、轟音が空を震わせても、美優の心を躍らすことはなかった。  いつしか、由紀には由紀の恋人が、瑠理香には瑠理香の恋人が寄り添って、それぞれのシルエットになっていた。  美優は人混みに紛れるように、その場を離れた。       ☆   ☆   ☆   ☆  月見橋まで来ると、花火の音に後ろ髪を引かれることはなかった。 (いつか、私にも夜を呑める日がくるといいなあ・・・でも、きょうは、もうおしまい。明日は仕事だし、早く寝よ)  橋を歩いていると、向こう側から知った顔が歩いてくる。  美優は顔をしかめ、その人物には気づかないフリをして、やり過ごそうと考えた。周囲は、人、人、人だらけだ。だが、意識すれば意識するほど、その人物に吸い寄せられてしまうのだった。  そして、まさにすれ違おうとした瞬間、 「こんばんは!」  美優はつい、不本意ながら言ってしまった。 「あらま。藤木さん、あんたも花火見物かい?」  先任係長の加瀬加奈子だった。朝の仕事前の点検のように、ジロジロと上から下まで美優を見回した。
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