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雨脚は強さを増していました。窓を打ち付ける音が、誰かがトニ男を呼んでいるかの様に、不規則に窓を打ち鳴らしていました。 時折吹く強風がヒュー、と隙間風となり、トニ男の家を通っていきました。 ビデオはしばらく砂嵐が続きました。 「これ使ってないやつかなぁ」 トニ男が取り出しボタンに指を添えたその時でした。 画面に、井戸が映し出されたのです。 「……え?」 トニ男は慌てて今日の新聞を探しにリビングへ駆け込みました。今日のテレビ欄を読むも、あの映画は放送されていません。 すると、井戸から手が這い出ました。青白く不気味な手がベタッと井戸の淵を掴んでいました。 「嘘だ、……嘘だ!」 トニ男は腰を抜かしながら後退りしました。真田広之みたいに一回膝をガクッと落としながら、後ろへ下がりました。リビングの壁に背をつけたトニ男。しかし目線はテレビの画面から離せませんでした。 遂には井戸から女の人が出てきました。黒く長い髪を垂らして、ゆっくりと近付いて来ます。 「そんなはずない! そんな事、あり得ない!!」 その時、トニ男の恐怖心は絶頂に達しました。真田広之みたいにちょっと寄り目になりながら、大きな叫び声を上げました。 「うわああああああっ!??」 薄れゆく記憶の中で、トニ男は思い出しました。 2年前の、夏の夜を。
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