第三日〜昼〜

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「……私は山田はじめに。」 薬師丸さんは暫しの沈黙の後、慎重にそう言った。視線が向けられる。 「……ただ、無論私が狼では無いことは私が知っているが、山田はじめの考察自体は不当だとは思わない。」 「では、なぜ」 俺は目を合わせて言った。......俺のやれることはやった。そしてこの考察が持つ意味も、分かっていたはずだ。なのにいざ疑われると冷や汗が垂れた。 「確かに山田はじめは中身のある考察ができる人間のようだ。だが君の考察は、私から見るとまるっきり逆の結論が出るのだよ。なにせ君は私としかラインが切れていないのだから」 俺は黙って右横の彼を注視した。彼もこちらに語りかけてくる。 「君は気づいているだろう、山田はじめ。山田と雪話、山田と美坂、山田と才商、美坂と雪話。君の考察を私の視点から見ると、この四パターンが有り得ることになる。そう、君の考察は私から見ると、君が最も狼として可能性が高いという結論になるのだよ」 薬師丸さんはそう言い終わると、残り半分を切った砂時計の方に向き直った。ふと机の下の手を見ると、小刻みに震えている。......意外と緊張しいだったらしい。 薬師丸さんの意見は整然としていた。まず俺の考察には同意。その上で、彼の立場から見た狼の確率が高い者......即ち俺を挙げた。 ......俺の「ライン」の考察、これが定説になると、これからの議論の争点はこうなってしまう。 「俺か薬師丸さん、どちらを信じるか」。 .....自分で提言しておいて今更だけど、かなり自殺行為な考察を挙げてしまったのかもしれない。だが、占いは恐く明日襲撃され、初日に市民陣営を処刑してしまった今、陣営の勝利も正直結構危うい。自分の生存だけじゃこのゲームは勝てないのだから、危険を犯してでも最善を尽くすしかない。
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