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まず、このゲームのルール。誘拐犯が説明したのは『実際に人狼ゲーム』をするという事だけ。役職の人数や処刑の方法などは聞かされていない。考えるべきことは.......
第一に気になるのは『処刑』だ。処刑、と言っても、誘拐犯としては殺戮は芸術的では無いと言っている。文字通りの処刑が行われる線は薄い。かといって人狼が強制的に性犯罪者に仕立てあげられるイカれたゲームだ。処刑、という物騒な響きを持つものを穏便に済ませてくれるとも思えない。
記憶を消してこの屋敷追放とかか…?いや、無傷でこんなイカれた屋敷からおさらば出来るようなシステムなら、そんなの皆こぞって処刑されたがるようになるのは目に見えている。……これは実態がつかめなくて恐ろしいな。
次に考えるべきことは役職、かな。俺がサークルで人狼ゲームをやった時には毎晩人を襲う人狼、特に能力を持たない市民、毎晩一人を守れる狩人、毎晩一人を人狼か否か知れる占い師、毎晩昼間に処刑された人物が人狼か否か知れる霊媒師、ああ、あとは人なのに人狼の味方をする狂人とかもあったかな。
9人でやった時にあった役職はこれくらいだった気がする。誘拐犯はあくまで娯楽としてこのゲームを見世物にしていると予想している。だから、片方の陣営が極端に有利になる人数にすることはないと思う。今回の参加人数から言っても、これから配られる役職は大筋はそんなものか。
あとは、どうやって人狼を性犯罪者に仕立て上げるかだ。さっき球太の前でも独り言を言ったけど、俺は人狼は思想を与えられるんだと思っている。誘拐犯の物言いだと人狼は“積極的”かつ“自発的”に人を襲うことになる。
だとすると、一番有り得そうなのは思想……そこまで強い思考の変化をもたらすものなら、洗脳と言ってもいい。人狼が人を襲う正当性を裏ずける、そんな物語を与えるんじゃないのか?それでも俺はそこまで人が変化するとはまだ信じられていないが……。
残りはあと五分。ああクソ、汗が止まらない。何か実用性のあることを考えた方が良さそうだ。
もし、人狼になってしまったとしたら、俺は全力で抗う。そんな思想には染まらない。しかしあの誘拐犯の口ぶり……人狼は自発的に人を襲うという何か確証めいたものがありそうだった。
どうやって連れてこられたかも誰一人覚えていないようだったし、誘拐犯は直接記憶を操れたりするのか……?ああ、知らないものはどうしたって怖い。だめだ、あと二分。人狼以外のことを考えよう。
市民陣営になったとして、一番重要なのはやはり占い師だろう。1晩1人とはいえ、人狼かどうか調べられるのは強力だ。占い師になるのが1番情報を掴めるが……襲撃される危険性も高まるし、何より市民陣営の勝利の大きな責任が伴うだろう。狩人も霊媒師も占い師程ではないが、襲撃の危険がある。
……となると、最も安全なのは市民か。
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自分が安全な職。責任の有無。結局自分のことしか考えてない。分かってる。俺は別にいい人間じゃない。あいつ一人に責任を負わせたく無かったのも、結局それを後で考えて後悔したくなかったから。
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