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俺は別に良い人間じゃない。だから悪い人間にならない努力をしなきゃならない。それを忘れるな。そう言い聞かせて、あと十秒のカウントを眺めた。
10……9……
あぁ、怖いな
8……7……6……
震えが、止まらない
5……4……
怖い
3……2……
あいつと、敵にはなりたくないな
1……
『あなたは市民です』
無機質な機械音が鳴り響く。その文字を見て、俺は思わず鼓動の収まらない胸を抑えて安堵の息を漏らしていた。良かった。心から良かった。人狼にはならなかったようだ。あいつ、どうだったかな。いや、そんなこと考えても仕方ないよな。俺は切りかえて、その下に映し出された役職の人数表を見た。
『人狼陣営 人狼2人 狂人一人
市民陣営 市民3人 占い師一人
霊媒師一人 狩人一人
※狩人は同じ人物を連夜守ることは
出来ない。※占い師の占いは今夜よ
り可能
』
その下には役職の一般的な説明と参加者名簿が記入されている。やはり極端な人数割にはならなかったようだ。ごくスタンダードな人数割。安堵すると同時に、誘拐犯はこれを本当に見世物にしていると確信を持った。そこで何か喉に引っかかるものに気づく。
……あれ、この人数表、おかしくないか?広間に集まったのは10人のはずなのに、全部の役職を足しても、9人分しかない。……あと一人はどこにいった?一人は当たりで、脱出できるとか、あるいは黒幕だったとか……?
その時止まっていたカウントダウンの数字が再び動き出した。その上に書かれていた文字は
『犠牲者の襲撃まであと五分』
犠牲者……?見慣れない単語に少し思考を停止した数秒後、俺は最悪な結論に気がついて思わず立ち上がった。椅子が床に転がって音を立てる。まて。なぜ気づかなかった。連れてこられたのは10人。部屋は十個。大きな円形の会議テーブルに椅子は……
9個だ。
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