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第一日目〜昼〜
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「…ぉ......、.......い、.......め、」
声が聞こえる。聞きなれた声。それが広い空間に響いている。……肩を揺らされてる?
「.......じめ、はじめ!寝坊だ、起きろ」
「……ん、」
俺はゆっくりと目を開く。ぼやけた視界の中、目の前には見知った灰色の髪と褐色肌があった。
「お、起きた。や〜、俺がはじめを起こすとか小学校以来のシチュで興奮すんなァ大将」
「.......お前と知り合ったの高校なんだけど」
砂浜球太(さはまきゅうた)。俺と同じ大学に通う体育大学生だ。ビーチバレーの選手で俺の唯一の親友。ポジティブ過ぎて鬱陶しいが熱い性格で優しい奴だ。その球太が真剣な顔をして覗き込んでいる。.......それもそうか
「……ここ、どこだよ」
俺は半身を起こして言った。やけに広い洋館の食堂のような場所。シャンデリアとバカでかい円型のテーブルと九つの椅子、それに床に転がった見知らぬ人達。俺たちを含めて10人くらいか?その全てに馴染みがない。思い出そうとすると頭の後ろが痛むようだった。
「分からねェな。つか誘拐?みたいな感じ?やべぇよなこれフツーに!ウケるわ」
ウケねぇよ。つか何?本当に誘拐?だって昨日は普通に……普通にどうしてたんだっけ……?なんでこんなところにいるんだ?分からない。.......いや誘拐じゃんそれ。
「ぅ……」
その時、横からかすかな吐息が聞こえてきた。和服を着た若い細身の男だ。歳は20代前半くらいだろうか。
「あの、大丈夫ですか」
俺は思わず話しかけた。男は半身を起こしてうっすらと目を開ける。肩に着くくらいの黒髪が切れ長の糸目にかかった。美丈夫といった顔立ちで、儚い雰囲気を纏っていた。
「えぇ……。あの、ここはどこでしょうか。……あなたたちは?」
男が言う。少し関西のイントネーションが混じったよく通る涼しげな声。この人も何も知らないのか……?
「いやー、俺たちも分かんないンスよ。ヤバいッスよねェ〜」
球太が答える。緊張感の無さに気が抜けたらしい。美丈夫は深くため息をついた。
「……そこら辺に転がってる方々もご存知ないのですか?」
男が聞くと球太は頷いた。
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