第三日〜昼〜

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「他に異存のあるものは」 「……いねーってよ」 競羽さんが半ばなげやりで言った。……何か可哀想になってきたな……。 「では、俺から一つ提案がある」 「……なんでしょう」 雪話さんは手のひらを合わせた中指の先に顎を乗せて視線だけ寄越している。……これが彼の考える時の癖みたいだ。 「容疑者5人にそれぞれ一番疑っている者を挙げていってもらう。その後理由や質問をしてもいい」 なるほどな。このままだと議論は停滞してしまうし、それは良いかもしれない。 「容疑者ねぇ……」 才商さんはため息とともにそう言うと、メガネの金縁を上げた。5人の容疑者達はそれぞれ考え込んだり周りを見たりしている。 ……俺が疑うべきは、誰だ。 昨晩書いたメモ用紙をテーブルの下で広げて見る。1番疑っていた拳坂君は白。となると…… 同調した人の中では才商さん、しなかった人の中では美坂さん、この二人のどちらか。 薬師丸さんも同調気味な姿勢は疑ったが、同意見の才商さんと比べると意見をしっかり表明しているように思えた。雪話さんは昨日一番立ち位置を表明した。この2人は除外。 今日の俺の推理の軸は、「自分の意見を表明したかどうか」。勿論これは狼を見つけるための議論だが、同時に今は自分を“白っぽく”見せなきゃいけない。そういう意味でも、推理には一貫性があった方がいい。 となると、この二人の比較もその点ですべきだろうな。 「順番は……そうだな。俺から見て反時計回りでいいか」 海画さんから反時計回り。ということは、才商さん→雪話さん→俺→薬師丸さん→美坂さん、の順だ。……どっちにするかの最終決定は才商さんの話を聞いてからだな。 「ええ。結構ですよ。今は貴方しか進行できる状態ではありませんから」
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