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耳に障る低い声が聞こえた。ボイスチェンジャーを使っているらしい。平坦で機械的な声が大きな広間に響く。
『これよりゲームを開始致します』
「はァ.......?なに、」
球太が思わず声を漏らした。
『これから皆さんには人狼ゲームをして頂きます』
人狼ゲーム?よく大学のサークルなんかでやってたが……
『もちろん、ただの人狼ゲームではありません。皆様には“実際に”プレイしていただくことになります』
“実際に”……?人狼ゲームは昼間は市民陣営は一人、人狼と思われる人物を投票で処刑し、人狼陣営は毎晩一人を殺していくゲームだ。つまり、実際にプレイするということは、
「は、ふざけんな。知らねェとこに連れてこられて、そんで俺らに殺しあえっての?誰がんなことすんの」
向かい側にいる長身で青い長髪の男が言った。下ろされた右サイドの髪を三つ編みにしているが羽織った深緑のジャンパーは擦り切れている。ファッションに関心があるくせに金はあまり無いようだ。
俺は周りを見まわす。皆混乱している中、隣の球太は冷静だった。
「……なァ、はじめ、どう思う?」
球太が小声で話しかけてくる。
「……相当コストがかかってる。この屋敷は相当金がかかってるし、俺たち全員を集めるにはそれなりの人員も必要だったはずだ。まず個人じゃ無理。誘拐は組織ぐるみの犯行。で、ゲームって言葉からすると俺たちは何かの実験とか見世物になる?まあそうだったとしても、それだけのコストに見合う目的は分からない」
俺はそこからの言葉は言わなかった。.......デスゲーム。頭をよぎった“目的”はそれだった。
「ひゅう、はじめ冷静だねェ。流石、サークル一のサイコパスの呼び声は伊達じゃないっすねお客さん」
「俺にはそんな冗談言えるお前のほうが冷静に見えるよ」
球太はまあなァ、と言って苦笑いした。冷静を装っているが、球太も悪い予感は感じ取っているようだ。
『.......私共が提示するルールに違反しない限り、みなさまの命は保証されております。』
命が保証されている。そう言う声は平坦で冷酷だった。
「なーにが命は保証されてるだよ。嘘に決まってるじゃねェか!誘拐犯の言うことなんか信じられっかよ」
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