第三日〜昼〜

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「先程のあなたの主張はこうだ。『美坂さんは特に理由もなく山田はじめさんを庇ったから、二人が狼である可能性が高い』。合っていますか?」 「……まぁ、そうだね。だって理由なく庇うなんてアヤシイだろ?」 才商さんは慎重に言葉を選んでそう言った。 「逆ですよ。あの場面においては、“理由があって”庇った方が怪しい、と思うのが正解だ」 「……どういうコトかな。それ、ジブンを疑えって言ってる?」 「はい。私は残念ながら狼ではないので、その推理は外れてしまいますねぇ。しかし事実は別として、あなたの言う“ライン”を考察の軸にして考えを進めてみると山田はじめさんの狼の相方候補筆頭は美坂さんでは無く、私という結論が出ないとおかしいんですよ」 「……どういうコト?さっきも言ったけど、キミはちゃんとした理由があったし、説得力もあった。それを不当な庇いだとは思わなかったからキミを外したんだけど?」 「違いますね。説得力があったからこそ、私の山田さんのラインを疑わなければならないのですよ。」 「……」 才商さんは何かを言おうとして口をつぐんでしまった。……何か心あたりがあるのかと勘ぐってしまう。 「昨日の美坂さんの“庇い”を思い出してください。どれも感情論で、とても大多数に疑われている人物の疑いを晴らすような説得力はありませんでした。それに彼はそこまで拘りも無く、薬師丸さんの反論に食い下がりもしなかった。論理の部分では勝負しようとすらしなかったんですよ」 雪話さんの発言に皆耳を傾けている。競羽さんまで肘をついて聞き入っていた。 「これが本当に今にも処刑されそうな“狼の相方”にする擁護でしょうかねぇ」
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