第三日〜昼〜

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……確かにそうだな。美坂さんは言い方悪いが、競羽さんと同じような“雑”な庇いだった。彼の職業柄、場を円滑に進めるように訓練されているから入れた庇いだったのかもしれない。そのくらいの軽い庇い方。仮に俺と美坂さんが狼だったら、『そんな雑な庇い方するくらいなら触れるな』って言いたくなるくらいの感情論だった。 「“山田はじめさんが大多数に疑われていた”あの場面では、説得力の無い擁護などはっきり言って本当に意味が無かった。結果どうです?美坂さんの“庇い”で誰か意見を変えましたか?」 「……ナルホドね。気づかなかったな」 才商さんがそう言って腕を組む。雪話さんはそれを無視して続けた。 「あの場面での美坂さんの“庇い”は狼の相方の擁護としては弱すぎました。相方だったら触れない方がましな程だったでしょう。狼の相方なら、私くらい説得力のある庇いをしなければ意味が無いんです。」 ……確かに美坂さんの“庇い”は立場を表明するほど強いものだったとは思えないな。彼はコミュニケーションの中で集中砲火を浴びている俺を一旦擁護しただけで、結局のところ彼は何の主張もしていなかったというのが妥当だろう。 「なのにあなたは山田さんの相方として私を挙げなかった。一応庇う姿勢を見せた美坂さんを疑うのは良い。でも、そこで名前まで出した私を全く挙げなかったのは不自然でした。というよりも作為を感じましたねぇ」 「や、待ってよ。サクイって物騒だなぁ……。ボクはただ、失念してただけで」 「私にはどうも狼の相方らしい位置が『感情論の弱い庇いをした人物>論拠のある強い庇いをした人物』という結論に至る思考回路が分からないのです。まああなたの頭が残念なだけだったというオチもありますが。」 「……い、言いたかないけど、ボクの頭が残念ってオチだよ」
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