第三日〜昼〜

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「雪話さんのさっきの考察、大部分は賛成なんですが、一つ違うんじゃないかな〜と思うことがあって、最初に指摘しておこうと思ったんです」 「……続けてください」 「『才商さんが意図的に雪話さんを疑っていると言うことを避けた』というのは俺もそうだと思うし、あなたの説明も理解出来た。ですが『自分の論理より“権力者”に媚びを売ることを優先するのは狼だ』というのはちょっと違うんじゃないですかね」 「……ほう」 雪話さんは隣の俺にしか聞こえないくらい小さな声で呟いた。そして円卓の全方位から集まる視線は静かに思考している。俺はできるだけ冷静に続きを進めた。 「確かに、ただの机上の人狼ゲームであればその理論は合っています。市民は役職を持たない分大胆な考察が求められるし、死んでもそれほど陣営に打撃はないから“権力者”に媚びる必要も無い。媚びてまで生き残ろうとするのは狼です。」 「しかしこのゲームは自分の人生がかかってる。『自分が処刑されても自陣営が勝てればいいや』なんて考えになる人なんていない。だから“権力者”に媚びる=生存意欲が高い=人狼 にはならないんですよ。市民であっても生存意欲が高くて当たり前なんですから。」 「……なるほど。一理ありますね。私も失念していましたよ」 そう言って雪話さんは、才商さんを馬鹿にしたように見やった。 「……で、山田。お前の才商優を指名した理由は?」 向かい側の海画さんと目が合う。その中央にある砂時計はもう3分の2をとっくに過ぎていた。……早く会議に決着をつけねば。 「俺の基準はシンプルです。『昨日自分の意見を表明したかどうか』。その基準からすると御廻さんに同調した中では才商さん、しなかった中では美坂さんを怪しんでました」 俺は言い終わる手前で美坂さんを視界の隅に捉えた。彼はぼやけた視界の中でも顔色が悪いのが分かる。
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