第三日〜昼〜

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話半分で聞いていたらしい競羽さんが興味無さそうに聞いてきた。……推理も放棄したため暇らしく、隣の薬師丸さんのウェーブがかった黒髪を三つ編みにして遊んでいる。薬師丸さんは気に止めた方が負けだとでも言わんばかりに神妙な顔をして腕を組んでいた。 「現時点では狼二人と狂人一人で狼陣営は3人。市民陣営は5人です。しかし今日処刑も襲撃時の狩人の守りも失敗すると、市民陣営は3人。つまり狼陣営と同数になってしまうんですよ」 競羽さんはしばらくボーッと天井を見ていたが、結論に至ったらしく視線を寄越した。 「……あー、そっか。んで明日狼側が票を合わせちまえば、力技で市民陣営の誰かを落とせる。そしたら翌朝には3対1で俺らの負け確定っつー景気悪ィことになる訳ね。」 彼はため息をついてまた薬師丸さんの髪を弄り始める。流石美容師と言ったところか、見るとお硬そうな薬師丸さんの黒髪は右半分が綺麗に編み込まれていた。 「ま、俺には関係ないんだけどさァ……はぁ。せめて優しくして欲しいよな、なぁ。医者のおっさん」 「まだおっさんではない……」 競羽さんは手をとめず気の抜けた相槌を打った。茶化して誤魔化そうとしているが、彼の顔色はすこぶる悪くなっていた。 「投票で二人が同数だった場合、完全ランダムで処刑先が決定するとルール表には書いてありました。だから必ずしも負けるって訳では無いけど、リスクを承知の上で実力行使に出てくる可能性は充分ある。」 「そうだな。最悪のケースを想定すべきだ」 海画さんはそう言って静かに頷いた。 「だから狼側としては、今日市民陣営の誰かしらを処刑出来てしまえば後は運次第で半分勝ちなんです。」 どこからともなく息を飲む音が聞こえる。……負けたらどうなるのかなんて想像もしたくない。
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