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赤髪の男は声を張り上げた。口のピアスが光るのが見える。年は同じくらいっぽいが、あんまり関わりたくない人種だ。
「……キミ、落ち着こうよ。騒いだところで状況は何も好転しないじゃやいか」
隣で起きたらしい金髪の背の高い男が言った。シルバーのジャケットといいセットされた長めの髪の毛といい、煌びやかな雰囲気を纏った人だ。
「.......るせぇな。文句の一つや二つ、言いたくなるだろこんなん」
「……聞こえねえから静かにしろ」
左隣の長い黒髪を後ろで束ねた男が言った。彫りが深い顔には少し疲れた皺がある。男の言葉は穏やかだがその長身と纏う雰囲気には威圧感があった。
『一般的に人狼と呼ばれる役職に選ばれた方は毎晩一人を襲って頂きます。尚、このゲームに殺戮はありません。』
……?なんだそれは。矛盾している。
「は、毎晩一人を襲うというのは普通の人狼ゲームではないかね。それを実際に行うということは、とどのつまり殺戮に過ぎないではないか!」
仕事着のまま連れ去られたのだろう白衣の男がすぐに突っぱねる。ウェーブがかった黒髪と神経質そうな鷲鼻が特徴的な人だ。
だが確かにそうだ。それじゃデスゲームになってしまう。
『“襲う”というのは殺すという意味ではありません。文字通り襲って頂くのです』
「何が違うと……」
『“性行為”という意味ですよ』
「な、」
傍観していた俺は思わず声を上げた。なんだそれ?変態組織が財力持ちすぎたってオチ?
「はぁ?俺はホモじゃねェんだぞ気色悪ィ。悪趣味は顔だけにしとけやゴミムシ野郎が!!」
赤髪の彼は嫌悪感を顕にしてそう吐き捨てた。……自分も同じような顔をしているに違いない。
「口がワルいのはのはボク、職業柄好きじゃないんだけど。そればっかりは、や、キミに同意するね」
横で控えていた30代半ば位の男がよく通る声でそう言った。前髪だけ残して後ろに固められた茶髪と長身には成功者の雰囲気があった。白いスーツと高そうな腕時計が組んだ腕で光っている。……どことなく威圧感がある。
『もちろん、拒否権はあります。これはワタクシ共の意向とは異なりますのでオススメ出来かねますが。しかし、もし拒否される場合は……』
「……なんだよ」
『あなた方が死ぬだけです』
「な……」
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