第三日〜昼〜

19/25
前へ
/77ページ
次へ
 「僕は......薬師丸さんを疑う...かな」  昨日までは自信に満ち溢れたような話し方だった彼の声は語尾に向かう度小さくなっていった。  「どうしてかね」  彼の左隣から低い声が鳴った。美坂さんはここから見えるほど汗をかいていた。  なんだかこの人のこの過敏な感じは、緊張しいとか疑うことが苦手とか、そういう範疇を超えている気がする。何かもっと......例えばトラウマに起因するような? このゲームと関係があるのかは分からないけど、何かがこの人にはある。  「……特に明確な理由は、無いんだ」  薬師丸さんの視線から目を背けるように彼は小さく言った。 「理由なく、私を疑うのかね?」  薬師丸さんの低い声は少しご気が荒くなっている。美坂さんはそのまま黙っていた。  「またお得意の感情論か。そんなもので、命運を決められてしまう身にもなってほしいものだ」  美坂さんは尚も目を合わせないで俯いた。  「そ、そうだよ。僕のは......特に理由なんてない、感情論だ。正直、僕には君達二人の差なんて分からないし、もっと言えばどっちも人狼だとは思えないくらいなんだ。」  「開き直るのかね?分かっているのか、君のその一票は、十分私を破滅させられる力を持っているのだぞ」  薬師丸さんの声は焦りと怒りで低く震えている。美坂さんは下を向いたまま、光沢のある金髪の下で苦しそうな表情をした。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加