第三日〜昼〜

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「これで全員の候補者の答弁は終わりだな」  海画さんと、本当に小さい砂の落ちる音だけが西洋風の美しい屋敷に響いていた。皆一様に考え込んでいる。ある者は俯いて。ある者は砂時計を睨んで。ある者は唇を震わせて。沈黙と息苦しさが砂の音と共にホールに積み重なってゆくのが分かる。  昨日の投票は満場一致だった。だから、ある意味個人の責任は等しく全員に分散されていた。一人一人の責任は今日よりはるかに軽く感じられたんだ。  だが今日は違う。現時点で絶対的に疑われている人物はいない。間違いなく票は分散するだろう。今日はたった1票が誰かの命運を決定してしまう。そしてその候補の中に俺はいるし、他の候補者がそうなっても不思議じゃない。 『自分の1票が誰かを地獄送りにしてしまうかもしれない』 その責任の重さが全員を沈黙させていたんだ。だがその沈黙は意外な人物に破られた。  「なあ、これってもう投票始まっちまうんだよな?」  拳坂君だ。彼は今日、1人しか出てこなかったためほぼ真が確定した占い師、競羽さんに白を出されてからほぼ喋っていない。   「そうだけど……や、拳坂クン、キミは何か言いたいことでもあるのかい?」  拳坂君の左隣に座っている才商さんが怪訝そうにそう答えた。なんだ?拳坂君は才商さんの顔を観察するように凝視している。  「ん~、まあ、そうなるな」  拳坂君はそう呟いて、過剰なまでの視線に顔を顰めた才商さんにぐっと身を乗り出した。 「ボクに、ナニか……?」  才商さんは驚いて背もたれに体重をかけて身を逸らした。彼をじっと捉える拳坂君の瞳には前のめりになっているせいで赤い横髪がかかっている。目もとは影に隠され、口元の無表情が嫌に不気味に見えた。  「ああ。テメェに言いてぇ事があんだ」  すると彼は何を思ったか小さく笑った。緊張が円卓の上を走る。  「……俺の言いたいことはなぁ、才商優、お前が人狼だってことだよ」  低く唸るような彼の声が、砂の音に被さる。砂時計のガラスの中では昨日と何も変わらないスピードで砂が落ちていた。
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