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「……これはこれは、逆らったら殺す等と、あまり趣があるとは言えませんねぇ」
雪話さんが涼しい顔で呟いた。
『同じように、屋敷を抜け出そうとした方などワタクシ共が取り決めたルールを破った場合にも同様の処置を取らせていただきます。詳しいルール説明は明日。今日はみなさまの後方にあります部屋で一人ずつ就寝して頂きます。』
後ろを振り返ると扉があった。
『最後に、役職は部屋に割り当てられています。部屋の扉は入室時自動でコンピュータが施錠致しますので役職を見られることはありません。役職などの詳細は部屋のパソコンをご覧下さい。それでは、良い夜を』
機械音はそこで途切れた。
「待ってください。」
静寂に戻ろうとした時、横で控えていた雪話さんが声を放った。
「今夜、役職を割り当てられるということは、“人狼”役の人間は無作為に役を与えられるということですよねぇ。ということは、今現時点では皆ごく普通の人間。それが銃口を突きつけられている状況だとはいえ、今日趣味の腐りきったあなたがたに役職を与えられただけで性犯罪者に変貌すると?そんなことは信じられない。」
一息で言い切った雪話さんは尚も表情を変えない。その綺麗な横顔には知性の光が見えた。
「それは皆さん自身が1番良く分かっているはずです。今夜、性犯罪者になれと命令されたとしましょう。それで『ではやりましょう』となりますか?それとも先程仰っていましたが、ルールに従わねば殺すのですか?暴力で従わせる頭脳戦とは、それはあまり芸術的ではありませんねぇ。結局、貴方がたのやっている事は間接的ではありますが、ただのデスゲームではありませんか」
雪話さんは一切口ごもることなく涼やかな声で言い切った。その言葉には皆同感したらしく、ことある事に突っかかっていた赤髪の彼も黙って聞いていた。
『確かに今この時点ではルールを遵守しない方には暴力を行使せざる負えないと申し上げました。しかしそれは今日限りの事です。ふふ、芸術的ではないのはワタクシ共も嫌いなのです。その意味は明日に分かることになるとお伝えしておきましょう。特に、人狼になった方には嫌でも』
再び沈黙が流れる。
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