深夜0時の密事

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「…ん…」 仄かに香るタバコの匂いで、絢音は瞼を開けて横を見る。 「まだ、起きてるの?もう、0時よ?」 その問いに、隣の男…藤次は、口に咥えていたタバコを離して寝そべり、汗で濡れた絢音のか細い肩を抱いて深くキスをする。 「なに?」 タバコの味のする口内から解放され見上げると、夏の月明かりに照らされた中、不敵に嗤う…彼の男の顔に、ドキリと胸が高鳴る。 「お前の可愛い寝顔見たいから、寝るん惜しいんや。…ホンマ、憎らし…」 そうしてタバコを灰皿に投げ捨てて、顔を赤くした彼女の身体を仰向けにさせて跨る。 「しよ?まだ、0時や。俺はまだ、全然満足してへん。夜は…俺らの営みの時間は、これからや…」 「藤次…」 潤んだ瞳で見つめる彼女に、藤次はそっと耳打ちする。 「好きや…」 そうして、夏の夜の光で青白く輝く絢音の汗ばんだ肌にキスをし手を握りしめ指を絡めて、自分の下で切なく喘ぐ彼女を抱きしめて、甘美な情事に、溺れていった… 窓の外では、月の光の下でヒラヒラと棚引く風鈴が愛し合う2人の契りを、密やかに見つめるかのように、声をかき消すかのように、涼やかな音色を奏でていた。
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