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第1話 到着
美玉町。木の葉のさやぎが聞こえ、川や泉の音が響くほど静かで、清流が美しく、山に霧がかり、夜には月も星も見え、精霊伝説も残るこの町に、東京から私立堂前高校の演劇部が合宿に来ていた。
「うわぁ、きれ~い!」
窓ぁら見える湖を見て、黒髪ロングヘアが清楚なイメージを与える2年生の水鏡 玲理 が目を輝かせる。
「田舎だっていうから、ちょっと嫌だったんだけど、結構いいところだな」
イケメンの如月竜也が、さりげなく玲理の隣に陣取る。
「でしょう。夏の夜の夢にぴったりだと思ったからここを選んだの」
音楽教師で演劇部顧問の月島みことが得意そうに言う。彼女は演劇部のOGでもあるのだ。
「ふっふっふ! 腕が鳴るわ!」
衣装チーフの愛川玲亜の眼鏡が光る。
「卒業の年に最高の思い出になりそうだよな」
「そうね」
部長と副部長で妖精夫婦役をやる大野健治と姫野クリスが感慨深げに言う。
姫野は母親がイギリス人、父親が日本人である。母親譲りのクリクリした眼と巻き毛で、華やかな雰囲気を持つ美女である。
「お~い、みんな~!」
「あっ、馬場が練習前にロバになってる! 壊さないでよ」
「は~い、愛川先輩」
一足先にロバになっているのは、ムードメーカーの馬場樹である。
「あれ? 灯田くんは?」
「ああ、練習で使うホールに行って照明の確認するって言ってました」
「灯田くんらしいわね」
姫野の言葉に月島がクスッと笑う。
堂前高校演劇部の面々が宿泊している木組みのロッジで、そこから10分ほどの所に練習に使うホールがある。
「みんな、外に出て景色をもっと近くに感じましょうか」
灯田 明も帰ってきてから、みんなで外に出た。
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