ホラー色の砂たち:2‥‥海岸

2/3
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「ついに夏になった‥‥。それにしても暑い夜だ‥‥。エアコンばかり使っていてもな‥‥」  とヒロシは、近くの海岸を散歩することにした。  夜の海岸は、波の音だけが聞こえ、誰もいない。当然だ。  私は砂浜に座ると、空を見上げた。 「流れ星でも見れないかな‥‥」  すると、一個の流れ星が、向こうから彼の頭上へと飛来して、消えた。  直後、向こうの岩場の方で、ピカッと何かが光ったのだ。  夜なので、間違いなかった。  ヒロシは少々、怖さもあったが、好奇心が勝り行ってみることにした。  その岩場は、少し向こうへ回り込んだ所のようだった。  ほとんど真っ暗のはずだが、その奇妙な明かりのお陰で、なんとか行けそうだった。  そしてヒロシは、その岩場に到着した瞬間――呆然とした。  ポッと明るい露天風呂のようになっていて、その水の中に裸の美女がいたのだ。  さらに驚いたのは、その美女が人魚だったことだ。 「なんと‥‥人魚って、いたんだ‥‥」  美女の人魚は、私に向かってニッコリ笑った。  ので、ヒロシも笑った。  すると、彼女の口は動いてないのに、 『貴方の家へ行きたいわ』 「ダメなんです。少し遠いから」  すると彼女は、水から腕を出して、指で空中にクルッと円を描いた。  ヒロシが驚いていると、その円の部分が無くなり、別の光景が見えた。  よく見ると、それはヒロシの自宅のバスルームだった。 『この穴を使うと、すぐに行けるのよ。まず貴方が行って』 「へー‥‥凄いな‥‥」  さらに彼女は、その穴を両手で広げて、大人が楽に通れる大きさにして、 『さー、どうぞ』  ヒロシが、その穴に入ると、間違いなくバスルームだった。 『私が入れるように、水を入れて』  ヒロシは急いで、浴槽に水を入れた。 やがて八分目ほど水が入ると、彼女もその穴から、こっちへと入って、そのまま浴槽の水中に入った。 『さー、楽しみましょう』 ヒロシはすぐに浴槽の中の彼女の傍に入った。 その直後、浴槽の底が無くなり、二人は広い広い海の中へ入って行った。 ヒロシは何も付けてなかったが、呼吸するのに困らなかったのは、恐らく彼女が人魚だからだろう。 ヒロシと彼女は、その海底を最高の気分で泳ぎ回った。 調子に乗ったヒロシが、後ろを向いてる彼女に抱きつこうとした時、不意に彼女が振り向き、ニッコリ笑った。 ヒロシも笑いながら、キスをしようとした。 すると彼女の顔が、見る見る変化しはじめたのだ。 目は、まるでトカゲのようになり、口はワニのように耳元まで裂けた。 体も同様に変身していった。 驚いた私は、必死で逃げた。 浴槽に向かって、必死で上昇して行った。 そして浴槽から出ると、フタをして周りにある 重そうな物を乗せた。 「あー、驚いた。だけど多分これで大丈夫だろう」 私はバスタオルで体を拭くと、自室に戻った。 ベッドでグッタリした直後、深い眠り入った。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!