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フラワーパークを満喫した莉子達は空が茜色に染まる頃に今宵の宿泊先に到着した。ふたりが泊まる宿は、この地方の宿泊宿ランキングで上位に位置する人気の老舗旅館だ。
案内された部屋は室内露天風呂付き和洋室、寝室部分には最初から布団が2組敷かれており、部屋に着いて早々に莉子と純はそれぞれの布団に寝転がった。
「わぁーい。お布団久々っ」
「敷き布団もたまにはいいもんだなぁ」
布団に大の字になるふたりは畳の香りを吸い込んだ。
「大丈夫? 昨日は仕事だったし、レンタカーの運転もして疲れてない?」
「少しね。でも平気だよ」
この旅行は土曜の純の勤務終わりから始まっている。土曜に休みを貰った莉子でさえ、少々遊び疲れているのだ。
純は8時間勤務の仕事をこなしただけでなく、慣れない土地で車の運転もしている。彼の疲労は莉子以上だろう。
「肩と背中凝ってない? マッサージしてあげようか?」
「じゃあお願いしようかな」
布団にうつ伏せになる純の腰の上に莉子は跨った。ほどよく筋肉のついた彼の広い背中を適度な力加減で揉みほぐす。
背中をほぐした後は肩を軽く叩いたり、押して揉んでを繰り返した。
「お客様、岩が入ってるみたいに身体がカッチカチですよー」
「あー……気持ちいい。莉子はマッサージ上手いな」
「ふふっ。上手いのはマッサージだけなの?」
悪戯な笑顔で純の身体に覆い被さった彼女は、うつ伏せた彼の無防備な耳たぶにキスを落とした。途端に、純が顔を上げる。
「ちょ、莉子、待って。それは反則」
「ダメなの? いちゃいちゃしたいのに」
布団の上でもみ合うふたりはぐるりと場所を入れ替わる。今は莉子が下に、純が上の体勢になり、莉子のスカートは彼を誘うように裾が乱れてめくれていた。
「俺だっていちゃいちゃしたいよ。けど夕飯の前だしさ。夕飯の時間、18時にしただろ? あと1時間もないよ。仲居さんが来ちゃうだろ」
「んー……、1時間以内じゃ、終わらないよねぇ」
含みを込めた言葉を放って笑う莉子に純は仕方がないなと苦笑して、莉子のスカートの中に片手を忍ばせた。
「純さんっ?」
「さっきのイタズラのお返し」
清楚な白のフレアスカートが太ももの付け根までめくれ上がる。「あっ」と莉子が抵抗の声を上げた刹那、こじ開けた両脚の狭間に純は顔を滑り込ませた。
莉子のショーツのラインに沿って這わせた唇が一点を強く吸い上げる。吸ったそこには真新しい赤い花弁が咲いていた。
「キスマークだけつけていくのは酷い! お返しじゃなくて仕返しじゃんっ!」
「夕飯の間、ずっと莉子がうずうずしてるかと思うと愉しみだな」
下半身の他はどこにも触れないまま純は莉子のスカートを綺麗に整えてやる。中途半端にキスマークだけを植え付けられた莉子は頬を赤らめて純をねめつけた。
「純さんのイジワルゥー、えっちー、変態ー、オジサンー!」
「いやだから、他はいいけどオジサンだけはちょっと傷付く……」
「えー、他はいいのっ?」
低能な会話を続けるうちに、再びイタズラ心に火がついた莉子が純のベルトとジーンズのファスナーを外してしまう。
戸惑う純に構わず、布団に押し倒した彼の下半身に莉子の顔が近付いた。
「莉子まずいって。そろそろ夕飯の時間……。それに風呂もまだ……」
「純さんだってお風呂入っていない時でも平気な顔して私のことベロベロ舐め回すじゃない」
「舐め回すって……」
身も蓋もない言い方に、純は反論もできない。莉子が彼の分身を唾液で満たした口内に迎えてしまえば、抗えない欲の渦に純は簡単に引きずりこまれた。
莉子が純を愛する音と純が莉子に愛されて発するうめき声が同時に響く。束の間の甘ったるい時間を味わう彼らは夕食のことなどすっかり頭から抜け落ちていた。
トントンと、扉の方から控えめなノックと夕食を運んできたと告げる仲居の声が聞こえた。
ああもう、だから言わんこっちゃないと、純は額に手を当て項垂れる。ニヤリと笑う莉子の隣で彼は大慌てでパンツとジーンズを身に着けた。
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