誰もが誰かに嫉妬する

１

これは今から一ヶ月前のことである。

高校2年生の夏。

兄である郁弥にいちゃんの経営するライブバーで掃除のバイトをしていた時のこと。

元々は母のお兄さん……叔父さんが経営していたところだけどお兄ちゃんが引き継いだのだ。
料理人でもあったから何でもかんでも作れるし、なんとピアノも得意。優しいし、自慢の兄である。

開店前の掃除と言っても掃除だけでなく椅子のセッティングとか食器の用意とか夜にライブがある時は席の配置を変えなくてはいけないから地味に大変。

店が始まると大学生二人、バイトの人が来る。
それまでが私の仕事。土日は日中にウエイターの仕事もする。
それなりに良いお小遣いになってる。高校卒業したら夜も仕事に入りたいなぁと淡い気持ちでいる。
わたしは料理はしないから簡単な手伝いだけしかできないし、一緒に店をやるつもりはない。でも毎週何かしらライブやってるし身近に音楽を楽しめるいい環境なのだ。

家に帰っても親は仕事だからいないけどね。

カランカラン

「まだ開店前ですよ……あっ」

「よぉ、成美ちゃん。お客様入ってきたらまずはいらっしゃいませ、でしょ」

この声は！

「いらっしゃいませ……って久しぶり」
「3年ぶりかな、大きくなったなぁ」

この突然の来客は柳さん。ロン毛で髭、サングラス、高身長に淡い水色のスーツ。
昔と変わらずおしゃれで少し見た目変わったけど特徴のあるハスキーな声ですぐわかった。

「郁弥は？」
「呼んでくる！　今仕込み中で奥に……」

呼ぶ前から郁弥お兄ちゃんは店の中に戻ってきた。

「柳……」
「おっす」
「おおう」

郁弥にいちゃん、すこしびっくりしてる。2人並ぶと本当身長差あるなぁ。