少数派の恋愛事情～Minority Love～

１.物語の始まりは7月の喫茶店から

世の中は多数派と少数派で出来ている。
彼、石田　卓(イシダ　タク)は、少数派の中の少数派･･･いわゆる変わり者である。
可愛いものに目がない彼は、27歳にしてぬいぐるみやグッズだらけの部屋に住んでいる。
綺麗に整理整頓され並べられた、犬や猫のファンシーグッズがずらりと部屋を埋め尽くす。
そして、今の彼のマイブームになっているのはシロブチ犬と呼ばれる犬のキャラクターである。
白い皮膚に黒い斑の犬でデブっとしたその体に米粒みたいな目。卓は今そのキャラクターが推しなのである。
そんな彼の良き理解者でもあり、古くからの友人がいた。
飯田　遼(イイダ　リョウ)。小・中・高と一緒のいわゆる親友である。
遼は多数派の中の多数派。つまり普通を絵に書いたような人間だった。
この年になっても、月に一度は必ず会うほどの仲でお互い地元の千葉で一人暮らしをしていた。
多数派の遼と少数派の卓。あまり似ていない2人だが、お互い気の良い間柄であった。
そんな2人だが、とある男が現れたことにより関係が徐々に変化していく。
この物語は、そんな2人の恋愛事情の物語である。

物語の始まりは、7月の喫茶店
ウッドな材質の家具が並び、天井にはシーリングファンが回っている。照明はオレンジ色に光り、モダンでおしゃれな喫茶店の奥の席で男が1人座っている。
可愛らしい動物のキャラクターのＴシャツを着た童顔の男。明らかにこの喫茶店で浮いている。
すると、お店の扉が開いてカランコロンと音ともに男が1人入ってきた。
「わりぃ!遅れてすまない！」
遅れて入ってきた男が遼である。
黒い無地のシャツにジーパンに靴と一般男性が無難に着こなす服である。
「よっ･･･久しぶり！」
スマホをポケットにしまいながら遼を見上げているのが卓である。
「久しぶりって…ついこの間会ったばかりだろ」
少し微笑みながら椅子に腰かける遼。
「この間って会ってから一か月でしょうが」
卓は、遼を見つめながら話をする。
「いや。こんなに頻繁に会うのお前位だよ。もう飲み物頼んだのか？」
「いんや･･･」
卓は首を振りながら言った。
「お連れ様はこられましたか？」
すると喫茶店のマスターがテーブルまで来て尋ねてきた。
「今、来ました。マスターいつもので」
「あっ、俺もお願いします」
2人は、マスターに声をかけた。どうやら2人は、この喫茶店の常連らしい。
「かしこまりました」
顔色一つ変えない無表情のマスターをよそに2人は話を始めた。
「それで、今日は何で俺を食事に誘ったの？用事？」
遼は卓に尋ねると、卓は食い気味で答えた。
「用事がないと誘っちゃダメ？」
「ダメじゃないけど、俺にだって用事があるんよ」
「どうせネットゲームだろ」
卓の言葉に、少しムスッとした様子で遼は答えた。
「どうせってなんだよ。まぁ、そうだけど、0時位からやる予定なんだよな」
「･･･じゃあ今日はうちで泊まっていかないのね」
「そうだな」
「ちぇっ･･･」
卓は残念そうに呟いた。
「そんで、今日はどういう予定なの？」
「どうしよっか･･･」
しばらく考える卓に、
『何も考えていなかったな…こいつ･･･』
と遼は思っていた。
「まぁとりあえず、ここで一服してから考えましょうよ」
「やっぱりまだ決まってなかったのか･･･」
遼は呆れた様子で言った。
「いや、まぁ用がないってわけじゃないんだけど…」
少しごもりながらしゃべる卓をみつめる遼。
「じゃあなんだよ…」
遼の言葉に少し渋りながら
「この間、SNSで仲良くなった人と会ったんだよね」
と卓が言うと、遼はその話に乗り気で食いついてきた。
「それは女？」
「いや、男だよ」
「なんだ･･･」
つまらなそうな遼の様子に少しムッとする卓。
「まぁそれで、その男が遼に会いたいんだってさ」
「へっ？ちょっとそれどういうこと？」
遼は変な声を出しながら表情が固まった。
「まぁちょっと話を聞いてくれよ」
卓は、そう言うとその男との出会いを語り始めた。

次回、卓がSNSで仲良くなった友達現る！