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へぇ…流石は大西さんの妻なだけある。が、正直腹立たしい。戦う力を持たない人間が、一時の魔で誰かに殺意を向けるなど、僕には到底許せない。
真奈が放った鋏による一撃は、吉井の鋼鉄武装を貫くことは無い。鋏が明後日の方向へ吹き飛ぶ刹那、吉井は躊躇なく彼女を思い切り蹴飛ばした。死んでしまうかもしれない、そんな善意は、もう吉井には欠片も存在しない。
銃声、ガラスが派手に弾け飛ぶ音、真奈は走馬灯の中に京呉と京呉に対する嫉妬心を天秤に賭けていた。しかし、もはやその賭け事は遅すぎた。
大西、決死の覚悟で帰還するも、何もかもが手遅れだった。数人の部下の遺体を後目に、妻を見つけた。外傷は比較的良好だったが、しかし…
テクノライズされた人間には、視界に入った瞬間に、その者の生死が一瞬にして分かる。わかってしまうのだ。赤い文字で、既に死亡していることと、死因に関する情報が浮かび上がる。わかっていても、その文字列を無視して、生存の可能性を見出してしまう。真奈、俺を許してくれ…
妻の遺体はとても綺麗だった。とても、故人だとは思えないほどに__
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