私の弟は反・反抗期

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 でも、とうとう私は、人生最後の日を迎えてしまった。母と父は泣いていたけれど、弟はいつものように笑顔で私の病室に来てくれた。 「ねぇ、晴人?」 「ん?」そう答えた弟は涙目になっていた。 「ねぇ、どうして泣いてるの?」 「いや、お姉ちゃんが初めて俺のことを名前で呼んだからだよ」 「今までも呼んだことあるでしょ」 「そうだったっけ」 「うん。心の中でだけど。」 「心の中でか、」 「うん、こうなるなら、もっと、前から、こうして、話を話しておけばよかった…」 「うん……」気づくと私と晴人は涙を流していた。この姿を見てた母と父も泣いていた。 「でも、私ね、余命宣告されてからのこの一週間が人生の中で一番楽しかった」 「本当?」 「本当だよ。晴人の事、ずっと勘違いしてたけど、晴人は昔からずっと優しかったって知れたから」 「そんな、」 「私ね、昔も今も、晴人を嫌ってなんかいなかったよ?前世の私はきっと、なんでも出来るあなたに嫉妬して八つ当たりしてたんだと思う。辛い思いさせちゃってごめんね。」 「もしかして、お姉ちゃんも前世の記憶があるの?」 「ううん、ないよ。ただ、そんな気がしただけ」 「俺さ、昔のお姉ちゃんも、今のお姉ちゃんも大好きだよ。そりゃ、寂しかったこともあったけど、それでもやっぱりお姉ちゃんがお姉ちゃんで良かった」 「晴人にそんな事言ってもらえる日が来るなんて、今日は幸せな日だな〜」 「うん……」 「私、生まれ変わっても、また晴人のお姉ちゃんになりたい。それが例え冷たい晴人でも優しい晴人でも、私にとってはどれも大好きな晴人だから。    ねぇ、私、また来世でも、晴人のお姉ちゃんになっていいかな?」 「もちろん。俺も何度生まれ変わっても、必ずお姉ちゃんの弟になる。約束する」 「うん、約束」    視界がぼやけて、晴人の顔はもう見えなかったけど、晴人の優しい手の温かさだけは伝わってきた。 「ねぇ、お母さん、お父さん、晴人、今までありがとう。私、幸せだった」  父と母は泣きながら沢山の言葉をくれた。  私、愛されてたんだな 「晴人?」 「うん?」   「ね」 「うん、ね、お姉ちゃん」  優しくそう言う晴人の声を聞きながら、私はゆっくりと目を閉じた。
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