私の弟は反・反抗期

2/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 弟は中学二年生になった。  この年頃の子の多くは思春期や反抗期を迎える。普段から反抗期みたいな弟に本当の反抗期が来てしまったら、最悪の場合殺されてしまうのではないかとさえと思い、怖かった。  ある日弟は、 「買い物付き合え」と私に言った。  弟が私を誘って出かけるなんて今まで一度もなかった。嫌な予感がしたが断ることも出来ないので仕方なくついていった。  近所のデパートに着くと、弟はスタスタと歩き小さな雑貨屋に入った。弟は店に入ると人をかき分け、何かを取り、私に突き出してきた。それは黒地に黄色のイナズマが描かれた頑丈そうなスマホケースだった。値段を見ると、三千円と中学生が買うにしては少し高いものだった。 「これ、買いたい、の?」 私が恐る恐るそう聞くと、 「買え」 弟はその一言だけ言い残し、店を後にしてしまった。  弟にとって私は財布だったようだ。 本当は買いたくなかったけど、このまま買わずにお店を出たら弟に殴られるかもしれないし、仕方なくレジへと向かった。 「ご自分用ですか?プレゼント用ですか?」 店員さんが笑顔で聞いてくる。脅された時用、という選択肢を用意してほしいなと思いつつ、自分のではないので 「プレゼント用で」 と言い青い袋に包んでもらった。袋代がかかるなら、自分のと言えばよかったな。とも思ったが、自分がこういう趣味だと思われるのもなんとなく嫌なので、そのまま袋に包んでもらった。  店を出ると弟が待っていた。 「これ、買ってきたよ」 私がそう言うと弟は袋を無言で奪い取り、無造作に箱を開けすぐにスマホにつけた。子供らしい一面もあるのだと思いつつ、こんなことを言ったらどんな目に会うかわからないので、私は黙っていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!