プロローグ

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イーヴァ王国王女 ステファニーがイスタリアランド王国国王ラッセルの元へ嫁いで早くも1年になる。 気の早い者たちは「お子は?お世継ぎを!」と捲し立ててくるが、今はあえてスルーする。 嫁いで来ていきなり夫の側室が喧嘩を吹っかけて来てくれたお陰で、夫と過ごす時間は少なかった。 ラッセルから「もう少しだけ2人きりで過ごそう」と言われたのでステファニーもそのつもりだ。 母方祖父母は結婚してから2年目で、両親は4年目に第一子を儲けている。 焦った所でコウノトリは運んできてくれないさ。 「王妃、失礼致します。……王妃?」 急ぎの公務もないので、ステファニーは読書をしていた。 お茶とお菓子を持ってきてくれた侍女のメディア・ジュリーは熱心に読書をする主人を呼びかける。 「ああ、ごめんなさい。熱中してたみたい。良い香りね。」 「王妃の故郷 イーヴァ王国より取り寄せた茶葉で御座います。 ところで何をお読みになられているのですか?」 「イスタリアランド王国の初代国王夫妻関連の本よ。嫁ぐ前に一通り勉強してきたつもりだけど。やっぱり本国は違うわね、凄い量。」 ソファに座り直すと、メディアはサッとお茶の準備を始める。 「まだ途中だけど、私もこうありたいと思うわ。」 「初代国王のアンリ陛下の正妃であらせられたクリスティーヌ王妃は"聖女"と呼び声が高いですし、"賢王"と慕われる2代国王のルドルフ陛下の御母堂、クリスティーヌ王妃は"国母"として皆に慕われて御座います。 ですが、"ステファニー王妃はかのクリスティーヌ王妃の再来だ"、と市井では言われておりますのよ。」 「そう?嬉しいわ。」 ステファニーは、メディアが淹れてくれたお茶を静かに啜った。 (まぁ、そうでしょうね。私はそのだもの……。 クリスティーヌとしての人生は中々に濃い生涯だったわ…未練が無かったのにね。こうしてまた転生するなんて、これも運命の悪戯ってやつかしら……。) 実はステファニー、前世の記憶がある。 その前世は、いま話題に出ているイスタリアランド王国初代国王 アンリ・アルフォンソ・エヴァーライヒの糟糠の妻 クリスティーヌ・ケイト・エヴァーライヒ、その人である。 イスタリアランド王国建国に貢献、夫をよく支え、後宮の女主人として君臨。 夫が側室との間に儲けた庶子たちや王族の子女たちを養育し、良妻賢母の鏡、建国の母と今なお人々に慕われ、崇め奉られている。
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