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人助け
「……え、あ、その、だ、大丈夫です、すみません、」
真っ青な顔で気まずそうに言ったヒソカくんは直ぐに顔を伏せるとおえおえとえずいておりました。それは飲み過ぎて気持ち悪くなったが、吐きたくても吐けないという様子にございました。
「ちょっと待っていて下さいね」
それだけ言ってわたくしは近くのコンビニへと入り素早く買い物を済ませると、また彼の元へ戻ったのです。
ヒソカくんは相変わらず苦しそうにしておりました。コンビニの袋からまず除菌シートを取り出し、それで自身の右手の指を丁寧に拭いたわたくしはヒソカくんの隣にしゃがみました。ダラダラとヨダレを垂らしながら彼は不可解そうにこちらを見ておりましたが、わたくしは迷うことなく清めた指をヒソカくんの口の中へと突っ込んだのです。
突然のことに驚いたヒソカくんでしたが、直ぐに嘔吐反射でゲロゲロと吐き始めました。
吐き終えたヒソカくんの顔色はいくらかマシになっており、わたくしはコンビニで買ったペットボトルの水と鞄の中から取り出したタオルハンカチを彼に押しつけたのでございます。
「これ、どうぞ。それじゃあ」
わたくしは短くそう言うとタッとその場を駆け出しました。これ以上の接触はわたくしの優雅な見守り生活に弊害が出ると判断したからです。
ヒソカくんが後ろで何やら言っておりましたが、わたくしは振り返ることなく彼の前から姿を消したのでございます。
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