夜空の少年少女達よ

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夜空の少年少女達よ

こっちの月は生きていますよ。 陰の月を見つめ、少年は言う。 咄嗟に口にした言葉に少年は向き合う。 何故、あの月は生きているんだろう? 如何して、 あの瞬間君に『生きている』と伝えたかったのだろう。 『それはね、君がそうなりたかったからだよ。』 どんなに雲の流れる夜も、 その夜空にはきっと、月が輝いていた。 『僕はここで待っているよ』 『君が笑って、そうして幸せになるその時まで。』 そんな月が羨ましかったんだ。 僕の生きる道って、これなんだなって思ったんだ。 『僕は君の夜空に傘をあげよう』 きっと、夜更けがみえる傘なんだろうな。 しとど降る其の星屑を返照する傘なんだろうな。 僕は夜空のいたみを知っている。 君も夜空のいたみを知っている。 「月は綺麗ですか?」 君は傘を忘れて、僕は雨に打たれてきた。 僕の左手には、常に傘があった。 痛いよ、痛いよと声をあげてここまで歩いてきた。 そんな2人は、ようやく出会った。 傘を持っていること、 流れ星が痛くないこと、 全部、全部教えてくれた。 それから僕は、空を眺めた。 海辺で花々が漂うのを見た。 草陰で蛙が跳ねるのを笑った。 そうして、僕らは生きてきた。 御月様は夜空で1人輝いていた。 それは僕らを繋いでいた。 あの時、同じ月を眺めていたから。 「とても、とても美しいです」 「こっちの月は生きていますよ。」
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