生きるということ

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生きるということ

或る三味線奏者が泣いた (さお)が薄暗く染みて、その色は夜空の様 涙を誤魔化す為に三味線を弾く 涙を、見せない為に (かせ)で紡がれた音色、それは細い産声 然し、力強い花を産んだ 芽吹く あっというまに花が咲き、 透き通った白い花びらが弦に宿る そのうち、ひとひらは宙を舞うことにした 風に流され、窓を抜け出し あっちに そしてこっちに揺られて、 生まれた意味を探して、花びらは世界を迷った やがて、それが行き着いたのは「或る三味線奏者」 彼女もまた泣いていたので 花びらは涙を拭うことにした
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