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花々の漂う海
渚の触れた海は灰色をしていた。
渚はそれを見つめ、そして気づく。
「あぁ、雲を映していたんだ」
世界の色をする君に
地を這う僕の出来ることは1つしかない。
すると、その雲は太陽の光を帯びて
君を白く染めた。
わぁ、綺麗だね、と微笑んだ。
あの日のアザレアの様だった。
海は地平線からユキノシタをつれてきた。
五回もそれを海岸で拾った。
重なる花唇は僕には初めてだった。
流れる花を、僕は見ていた。
時々霞む月が淀んだ。
海の蒼さは、渚を創る。
海があったから、渚がある。
そこには陸があり、花が生まれる。
その花はやがて君になる。
雨は再び新たな花を、物語を創りだしていく。
いつまでも
いつまでも
大地に生きる新たな生命が、
渚の運んだ麦藁菊を手渡すまで。
この物語を
いつか生まれる君が繋ぐ、その時まで。
海を飽和させる花々は海原を漂い続ける。
もう、月も怖くはなかった。
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