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「さすが、弓削朝忠様」
と、さっきまで逃げ惑っていた人々は朝忠を賞賛した。しかし、朝忠にはわかっていた。あの鬼はただの悪霊ではない。何か強大な力を持った者だ。
――あれは、おそらく消えてはいない。また出てくるだろう。
突然目の前の土地が砕け飛び、さっきの鬼が出現した。それを見て、人々は奇声をあげ、再び逃げ惑う。
「姉上、援護お願いします」
「承知!」
すると、どこからか巨大な魔法陣が現れ、地面いっぱいに広がった。そこから紫色に輝く光の柱が伸びてきて、天まで届く。シャーっという大きな音が鳴り響き、柱は徐々に太くなっていく。そして、ついに直径十メートルはあるかという球体になった。
「なんですか、姉上!?」
「これは『魔封球』というものだ。あらゆるものを捕えることができる呪法の玉だ」
「ぐわー……」
鬼は必死に声を出すが、まるで金縛りにあったかのように体が動かない。
「さあ、おとなしく死んでもらうぞ」
這子の倫子はニヤリと笑うと、呪文を唱え始めた。鬼は空中に浮き上がる。
「死ねぇぇ!!」
這子の声とともに、球体から無数の触手のようなものが出てきた。それらは一斉に鬼を掴み球体の中へと引き摺り込む。
「ぎやぁぁ!!」
悲鳴を上げる鬼だったが、球体はどんどん小さくなり、やがて消滅した。
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