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倫子は、それを拾い上げて月の明かりで読み進める。
「この後、子の刻きっかり(午前0時)に土御門の屋敷まで来いと」
「姉上、何用でしょうか」
「後継のことじゃ。どちらが当主になっても助け合えばいいだけ。我は朝忠が当主となり我は影として朝忠を助ける道を選ぶ」
土御門の屋敷にて、下の間で倫子と朝忠が控えていると襖が開き、そこには、弓削家以外の陰陽師が並んでいた。
「大儀である」
土御門の一言で場は静まる。
「弓削家の跡目のことである。そちたち二人、弓削の当主を決めるため、殺し合いの決闘をせよ。勝ったものが当主だ」
見る見る間に朝忠の顔が赤くなる。
「姉上、土御門は、我らのことが脅威なだけです。土御門家が弓削家の力を恐れたのです。我ら二人がかりで戦えば土御門を倒すこともできるほど弓削の力は強いから」
朝忠が膝を立て、今にも土御門に殴りかからんとす。倫子が右手でそれを制す。
「控えよ、朝忠。陰陽師同士が争うのは民のためにならず。そう言って父上は毒を毒と知って食したのだ」
倫子のまっすぐな目を見て土御門が視線を逸らす。
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