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なおも、朝忠が土御門を睨むと土御門が、ため息をつく。
「そのようなことではない。これは弓削のことを思ってのことじゃ。陰陽師になれなかった者が陰陽師に呪いをかけるのを防ぐため」
「我が姉弟に限ってそのようなことはありません」
朝忠が奥歯を噛み締める。
「過去にそのような例があるのじゃ。庭に出よ。すぐに戦いを始める」
現職陰陽師が全員ヘラヘラ笑っている。そういうことかと朝忠が立ち上がる。その手を倫子が握り庭へと引っ張る。
「姉上!」
「朝忠、始めるよ、殺し合いを。手加減するでない!」
その気迫に誰も何も言えなかった。二人が庭へと急ぐ姿に陰陽師がすごすごと続いた。
「よいか? 庭や塀や建物に傷をつけるでないぞ。始めよ!」
土御門が開始の合図をしたが、朝忠は式神を握りしめたまま震えていた。
「猫又!」倫子の声が響き渡る。
倫子の使い魔、猫の姿の猫又が出現し、朝忠の真横で今にも朝忠に飛びかからんとす。朝忠は、式神を投げる。二匹の狐が猫又に接近する。すると、なんと、猫又は主の元へと駆けていく。
「どうした? 逃げるのか?」
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