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敵を背に倫子のところに引き返す猫又を見て朝忠が笑う。
しかし、次の瞬間の光景を見て朝忠は凍りついた。倫子に近づいた猫又は、こともあろうに倫子に飛びかかった。倫子の肩に乗った猫又は倫子の首を噛みちぎった。出血しながら倫子は倒れ、ピクリとも動かなくなった。
「よし、計画成功。これで主殿の負け」
猫又がニタリと笑う。
猫又が振り向くと朝忠がこの世のものではないものを見たように目を見開いて立ち尽くし、全身を震わせている。目には生気が無い。陰陽師でも猫又の実力を見ればそんな顔をするのかと言わんばかりに猫又は鼻で笑った。
倒れている主を結界の袋で包み、中に火を吐き灰にするとそれを担いで猫又は人の姿でそこから逃げた。
「はっはっはっ、自分の使い魔が暴走するとは弓削倫子も噂ほどではなかったか」
土御門の愉快そうな笑い声が庭に広がる。
「弓削朝忠、そちは明日から陰陽師じゃ。しっかり働いてもらうぞ」
そう言ったのは三善だった。
「姉上ほどの方が自分の使い魔にやられるなんて」弓削朝忠は、天を仰いだ。
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