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陰陽師になった弓削朝忠は、たった一人で九尾の狐と戦っていた。
昼間だというのに辺りは暗く狐の動きもわかりにくい。圧倒的強さの九尾の狐の出現に、他の陰陽師は恐れをなしたのか、朝忠の実践練習にちょうどよいなどという捨て台詞を残して逃げてしまった。しかし、あまりの強さに朝忠は、なすすべがなかった。
「クッ……」
『どうした?その程度か?』
「まだだ!」
朝忠がそう言うと、持っていた刀から黒い霧のような物が出てきた。そして、その霧を纏った朝忠はさっきとは比べものにならないくらい強くなっていた。刀そのものが式神になる弓削流の術式だった。
「これで終わりだ!」
そう言って朝忠は、九尾の狐に向かって斬りかかった。しかし、九尾の狐もただ見ているだけではなく、尻尾で攻撃してきた。
だが、朝忠はそれを難なく避けた。そして、そのまま九尾の狐の首を斬った。
九尾の狐の首が地面に落ちていき、完全に落ちた時にはもう消えていた。
その後すぐに、空が明るくなり始めた。そして、戦いが終わったのだと思った瞬間、さっきまで目の前にいた九尾の狐が朝忠の背後に立っていた。眉間の刀傷から血を流している。『貴様……なぜ私を斬れた……』
「なっ!?」
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