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「舞夜くん、あんた夏のレース弱すぎでしょ…。」
8月の半ば、夏休み中の練習。
熱を持つ空と沢山のシューズに踏みつけられるアスファルトが、互いの青さを主張し合う競技場。
その真ん中でマネージャーの静夏が、今日のタイムトライアルで出た俺の記録を見て呆れたように言う。
「仕方ないだろ。俺の自主練のメインは夜だからな!」
「意味分かんない。夜にレースなんてしないでしょ…。日中の暑い中の試合に慣れなきゃ意味ないよ?」
「そうかな?……まあ、別に俺は大会で勝ちたいとか思ってないからな……」
陽炎で歪むブルーのタータンを見ながら言う俺に、静夏はまた呆れたような溜息をつく。
陸上部の強豪校に通う俺は、背が高くて体の線が細いという理由で長距離を専門にしている。
タイムが上の方であればあるほど駅伝のメンバーに抜擢されるのだが、俺は最もタイムが遅いため、競技人口の少ない競歩に回されているのだ。
確かに静夏の言う通り、普通の大会は日中にある。
夜に開催される大会になど、俺は出たことはない。
だけど…
「やっぱりほら、夏って基本何してても暑いけど…夜だけは涼しいだろ?だから、涼しい夜のうちにしかできないことをやりたいんだよっ」
ウインクをして親指を立てて言った俺を見て、静夏は「頭おかしいんじゃないの」と言って去って行った。
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