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「ごめん。好きになっちゃった!」
……妹と私は全然違う。
1つ年下の妹は、よく言えばマイペース。悪く言えば我儘だった。
妹は頻繁に私の物を欲しがった。おもちゃも、お菓子も。それはもう、親が私を不憫に思う程に。
まあ別に、私は何を取られようがどうでもよかったのだけど。
妹は、お世辞なんか抜きで「美しかった」。それこそなろうと思えばモデルにもなれただろう。
それに比べ私は「平凡」だった。だから可愛くなろうと努力はしていた。それでも妹には及ばない。
だから持っていったのかもしれない。……人も。
「ごめん! 好きになっちゃった!」
その言葉1つで、「ああそう」と、何回でも思った自分は今思うと壊れていた気がする。
取られたものが「人」でも、私の感覚はおもちゃやお菓子と然程変わりなかったから。
だからそれで喧嘩をしたことも揉めたことも1度もないのだ。
いつからか、私は表で主張するのをやめた。私はここにいないのだと思うことにした。
「好きな人」「友人」「知人」「親」。皆、妹に関心がいく。それが当たり前。そう染み付いていく。
それでも妹のことは喧嘩こそすれど、好きだった。それがたとえ殺し合い未満に発展しても。
高校生になった頃、やっと妹に焦点を当てる人が身近から減った。そこで知ることとなった。「あ。私は特別劣っていたわけではなかった」のだと。
どこかで劣等感があった。それは大きくなるばかりだったけれど、いじめられても妹のことが頭をよぎらないことが楽だった。
それでも妹のことは好きだった。
大人になって、お互い結婚した今でもやっぱり、私は妹のことが好きなまま。
理由は、きっと一生考えない。そんな、私の妹。
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