Intersection―交差点― 番外編

兄と弟 2頁

｢って、話するってなっても仕事の話ばかりになっちゃうね｣
｢じゃあ、何か別の話題に変えるか｣
｢だね！じゃあ･･･、プライベートは順調？｣
｢ブッ｣
｢あっ、ご、ごめん。吹き出すと思わなくて｣
｢い、いや｣

俺には恋人がいるのだが、普通の恋人じゃないというか、なんというか･･･。それは、また今度の話として。兄から、そんな話題を振られるなんて思ってもみなかったから、思わず吹き出してしまった･･･。

｢例の"彼"と、上手くいってないの？｣
｢そういう訳じゃない。ただ、あんたとこんな話をするとは思わなくて･･･｣
｢ああ、なるほどね。僕は上手くいってるよ！｣
｢･･･あんたの話は聞いてねぇよ･･･｣

兄の恋人も、まあ普通じゃない。ただ、年月としては、"俺たち"よりは長いからいい関係なんだとは思う。･･･こんな人を、どうして恋人にしたのか未だに謎だが･･･。

｢"どうして兄さんに恋人がいるんだ"。そう思っているでしょ？｣

(この人は俺に対する勘が、たまに鋭い)

｢そ、そんなことはない！恋人がいてくれた方が、俺としては願ったりだからな！｣
｢そんなに必死にならなくてもいいじゃない。僕は兄として、禮萌のことずっと好きだよー｣
｢気持ち悪い｣

ﾊﾞｼｯ。

｢いったぁい。兄をぶったな！｣
｢あんたの兄貴面がすごく腹立たしい｣
｢しょうがないじゃないか･･･。お兄ちゃんなんだから･･･｣
｢お兄ちゃん、って自分で言うところも気持ち悪い｣

ﾊﾞｼｯ。

｢もう！2回も叩かなくてもいいじゃない！｣
｢ああ、スッキリした｣
｢うー。まあでも、帰ってきた時よりは顔色良くなったからよかった、と素直に喜ぶべきか。それとも怒るべきか･･･｣
｢顔色？｣
｢うん。すごく悪かったし、疲れてたみたいだから｣

(そんなにか)

確かにここのところ、あまり休めてはいない。家へ帰れば面倒な恋人がいて、軍に来れば仕事が山積みだしな･･･。休暇を取りたいところではある。

｢あまり休んでないんじゃない？ちょっと横になりなよ｣
｢軍で無防備な姿を取ることは―｣

ﾄﾝ。ﾄﾞｻｯ。

｢な、なにするんだ！｣
｢こうでもしないと休まないでしょ！｣
｢で、でも、あんたが来たのに話しなくていいのか？｣
｢はぁ。あのね、禮萌。こういうときは、素直に休まないとダメ。僕のことはいいから、ゆっくり休んで｣
｢じゃあ、お言葉に甘えて･･･｣
｢あ、なんなら膝枕でも―｣

ﾊﾞｷｯ。

｢ぐふっ。いいストレート･･･｣
｢お願いだから静かに寝させてくれ｣
｢わかったよ･･･｣

このあと、すぐに眠りに落ちた。余程疲れていたんだと思う。兄を心から信頼はしていないが、たまにはこういうのも悪くない。そう思ってしまうのは、やはり疲れている。そう思うことにした。