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「でも、初めてですよね? 喧嘩で僕の家まで来たのは。よっぽどの事があったんじゃないですか?」
義兄はイライラと頭をかいた。
「……尚君もさあ。いい加減、姉離れしろよ。そういうの気持ち悪いよ」
カッとなって殴ったら、きっと義兄の思う壺なんだろうなと思いながら、手が出ていた。
「あんたこそ、姉の事を何だと思ってんだ」
本当に殴られると思っていなかったらしい義兄は頬を押さえ、悪態を吐きながら帰って行った。
「ちょっと、泣きながら走り去って行ったのって……」
「姉ちゃん、おせーよ」
殴った手を思わず背中に回すと、姉ちゃんが思い切り抱きしめてきた。
「馬鹿だねえ」
「うるせー」
「本当に馬鹿だねえ」
「しょうがねえじゃん。姉ちゃんにはあいつの事は殴れないんだから」
「ううん。もっと、早く殴ってでも出ていれば良かった」
涙声の姉ちゃんが小さく震えていた。沢山泣いてすっきりしたら、今後の事を考えれば良い。
「お腹、減ったね」
「姉ちゃん何か作ってよ」
「鍋で良い?」
「このクソ暑いのに鍋?」
「作ってあげるんだから文句言うな」
「……うん」
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