にゃん四章 眠る森

10/27
前へ
/138ページ
次へ
 ……………………。  ギーペの問いにボクは思案するも、推測は疎か憶測さえも思い付かない。  詩音ちゃんも思い付かないのか肩を竦める。  そして、詩音さんは、 「……もしかして、その『忘却領域』から“出生率を上げる打開策”を見付けた?」 「『お! 歌のにぃちゃん、いい線だが残念。答えは“『忘却領域』から得た知識と技術”を以て“人為的且つ人工的に子供を出産育児した”だ。当時の若い連中の生殖細胞を特例法であらかた集めてな』」 「「──!?」」 「──!? ……お、おいおい、ソレって、……──ヒトを……──」  ギーペの解答にボクたちは戦慄をおぼえる。さらに、ギーペは驚愕の事実を口にした。 「『──そ、そのさ。約百年も続けた結果、そのお陰で今や総人口は二億人前後を推移。更には『忘却領域』からを得て“結果的に南半球を犠牲にして北半球に人類にとって都合の良い自然環境を人工的に取り戻し”、そして、『忘却領域』に眠る各国政府が“現在に於いてもになりうる歴史の闇に葬った都合の悪い事実”を掘り起こして水面下の外交政治において優位に立ち、先の急激な人口増加の“絡繰り”を不問にさせた。今や水面下に於いてこの国は『忘却領域』という“箱”を以て世界に君臨しているって訳だ』」  ……開いた口が塞がらないとは、まさにこのこと。  詩音ちゃんと詩音さんもボクと同様で、三人でしばしの間、目を丸くしていた。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加