にゃん四章 眠る森

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 詩音ちゃんの唄と詩音さんのギター、そして、ボクのフルートが旋律を紡ぐ。  詩音さんから二日前に渡された音色さん作曲の『にゃensemble☆ズ』の新曲『雪の妖精(ホワイトスノウ)』。  曲調は滑らかに流れる旋律に安らぎを感じられる調べ。希とカレンちゃんの楽器『ensemble sphere』──玩具メーカーに勤めているカレンちゃんのお父さんが創った新種の電子楽器──のパートが欠けているけれど、これでも充分にいい完成度。さすがは作曲に関しては超一流の音色さんが作った曲。 「『──ほう~、練習しだして二日、合わせるのは今日が初めてなのに、スゲェー出来栄えだな!』」  ペンギンに人の音楽が分かるのかという野暮は横に置いておき、ギーペの讃辞は素直に嬉しい。 「ま、オレらこれでも音楽には少しばかり精通してるからな。この程度、造作もないさ」 「ん」 「お兄ちゃんと叶さんはそうかもしれないけど、わたしは素人だから二人の演奏に合わせる大変だったよ」  詩音ちゃんは謙遜しているけど、ボクからすれば詩音ちゃんはもう立派な歌手。もう少し自信を持ってもいいと思う。 「『ところでよ、叶』」 「ん、なに?」 「『お前、もう十二分にプロ奏者同等の実力があんのに将来プロのフルート奏者にならないのか?』」
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