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1 『此処は……何処だ?』
いつも同じ夢を見る。
そしていつも同じところで目が覚める。
いつからだろう、俺はずっと……同じ夢を見ている。
『此処は……何処だ?』
いつものように――全てが真っ白な夢の世界――で、俺は目を覚ます。
白以外何も無い空虚の中で、1人佇んでいる。
前後・左右・上下全てが眩しいほどに純白で、足元には自分の影さえも無い。
ただとてつもなく広い〈白〉の中で俺は、遙か向こうで誰かが手を差し伸べているのに気がついた。
俺はその誰かに向かって歩きだす。
ゆっくり、ゆっくりと。
もうそこまでやって来たとき、俺は一度歩みを止める。
なおも差し出したままのその手に恐る恐る近づいて、〈女神のようなその差し出した手〉を掴もうと、そっと右手を伸ばす。
……そんな夢をいつも見ている。
〈女神のようなその差し出した手〉を、俺は今日も追いかける。
顔も見えないはずなのに、どこか懐かしく、俺に安らぎを与えてくれる。
顔も見えないはずなのに、その笑顔は、とても美しく感じる。
……でもその後ろ姿は、どこか哀しそうに見えた。
放っておけなくて、俺は追いかけた。ただひたすら走り続けた。
もうすぐ。
もう、すぐそこなのに。届きそうで届かない姿を追い続けた。
いつからだろう、俺はずっと……同じ夢を見ている。
そしていつも同じところで目が覚める。
目覚まし時計の凄まじい音で飛び起きた俺は、いつものように身支度を整え学校に向かう。
平穏な1日が今日も始まる。
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