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7 本人には絶対に言わない(3)
それから親友と俺は、彼女たちにあっちこっち連れ回され、買い物に付き合わされ、荷物も持たされ……と大いにこきつかわれた。
正直かなり参った。女子の買い物は、とにかく長い。
品物を選んでいる時間より、喋っている時間の方が長いんじゃないかな。
ひとつの商品を手にとっては可愛いとか素敵とか。
たまにピョンピョン跳びはねてみたり……。
ああだこうだと口の方が忙しそうだ。
ショッピングセンターに設置されているソファー風ベンチで休憩しながら、俺たちは、はしゃぐ2人の様子を眺めていた。
帰り道。
今日はお目当てのものをゲットできたと、楽しげに前を歩く女子たちを、親友と俺は微笑ましく見ながら後を行く。
「今日はありがとな」
嬉しそうな親友の言葉に、俺も嬉しくなった。
「うん。彼女ちゃん元気になってよかったな」
「ああ。俺はあいつの元気溌剌なところが好きなんだよな。見てるだけでこっちもつい笑顔になるっていうか、元気をもらえるっていうか。なんか嫌なことがあっても『ま、いっか』って、気にしなくなるっていうか」
「そうだな。いつも明るい彼女ちゃんには助けられるところがあるなぁ」
「お前の彼女も面白いよな。いつも冷静で、しっかりしてて、何でもテキパキとこなすのに、たまにドジで、おっちょこちょいなところもある」
「俺は彼女のそういうところが好きなんだよ。それといつでも、誰にでも優しいし。明るいし」
「それに可愛いし。だろ?」
「言わずもがな」
「言うよな~」
それに俺だけが知ってる、泣き虫な彼女。
「俺は彼女の存在全てが、大好きなんだよ」
なんて、彼女には恥ずかしくて言わないような言葉も、親友の前では素直に言えるから不思議だ。
「おうおう、言ってくれるねぇ。なにのろけちゃってんだよ」
「本当に思ってることを言っただけだよ。彼女には言えないけどね」
「俺はいつも言ってるゾー。伝えたい時にちゃーんとな。ハッハッハッハッ」
なんか想像できる。
「俺はこの気持ちを大切にしたいんだ。心の中にいつも彼女が溢れてる。……こんなこと恥ずかしくって、本人に直接言える訳ないだろ! 口が裂けても言わない」
「お前らしいな。クソ真面目で、一生懸命で、シャイで、ちょっと笑える」
「ちょっと笑えるって何だよ!」
「そういうすぐムキになるところだよ。肝心なところがちょっと抜けてて、ズッコケる時があるってこと」
「なに人の分析してんだよ! ……でも、自分でもそこは直したいよな」
「いいや、お前はそのままでいいと思うよ。でも、恥ずかしいとか言ってて、彼女のこと守れんのか?」
「いざとなればね」
そう、いざとなれば俺だって。
いつもはバカばっかり言ってふざけてるけど、誰よりも熱く語り、何かあると一番に駆けつけてみんなを助けてくれる。そしてオレが悩んだりした時には、的確な助言をくれる。そんな親友には、感謝している。
本人には、絶対に言わないけど。
ああ、この4人の関係がいつまでも変わることなく、ずっと続くといいなぁ、とそのとき漠然と思った。
今日も平穏な1日が終わろうとしている。
疲れた体をベッドに投げやると、安堵感からかすぐに眠りについた。
『此処は……何処だ?』
俺は――全てが真っ白な世界――に呆然と佇んでいる。
足元には自分の影さえも無く、眩しいほどに純白の世界で、気づくと遙か向こうの〈女神のようなその差し出した手〉を追いかけている。
〈女神のようなその差し出した手〉は、掴もうとすると遠ざかる。
純白のドレスを身に纏い、白のベールに包まれた女神のようなその姿は、一定の距離をおいて俺から遠ざかる。
『君は……誰?』
心の中で問いかけても、誰も答えるはずもない。
もしも声に出してしまったら、消えてしまいそうで……それが怖かった。
俺は敬意を込めてこの場所を、『女神の居所』と名付けた。
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