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どこからか、楽しげに童唄を唄う声が聞こえてくる。
幼さを残した顔立ちであるが、両性とも思える曖昧な見た目をした子どもが、毬をつきながら。
青地に葵に彩られた女物の着物に、首にかからないくらいの短く、毛先まで丁寧に手入れされた黒髪には、まるで咲いているかのように、大きな葵の簪を挿していた。
しかし。その曖昧さを払拭させる不可解なものがあった。
その子どもの行動を制限する足首に括られた縄。さらには、頑丈な牢──。
「·····あっ」
毬が足先に当たってしまったようだ。転がってしまい、子どもはそれを追いかけていった。
その牢内を唯一照らしている一筋の光の方へ行った時、ぴたり、と追いかけるのを止める。
その光が体に当たってしまうと、たちまち悪化させてしまうと言われていたからだ。
だから、元々体が弱い自分は薄暗い座敷牢にいるのだと。
けど、まだまだそれで遊びたい子どもは、何とか取ろうと手を伸ばす。
「──葵。だめだよ」
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